ソーレホーム城南・新春落語会

 冬とは思えない晴天の2月16日土曜日の午後、山形市城南町にある「ソーレホーム城南・新春落語会」に、走風亭満月さん、笑門亭福来助さん、楽笑亭明世さん、山彦亭虎之輔の四人が出演。さらに、卯さ銀さんも裏方として参加してくれ、計五人でお邪魔してきました。
 ソーレホーム城南に山形落語協会がお呼ばれするのは、今回で五回目とのこと。入所者の皆さんや、元気なスタッフの方々にあたたかく迎えられ、われわれもノリに乗って演じ、皆さんに楽しい90分を過ごしてもらうことが出来ました。

 <本日の演目>
・山彦亭虎之輔  『六尺棒』
・笑門亭福来助  『ぞろぞろ』
・楽笑亭明世   『禁酒番屋』
・走風亭満月   『紙入れ』

 トップバッターは、虎之輔です。最初の自己紹介で「虎さんとよんでください」といったところ、スタッフの方からすかさず「虎さん」と声をかけてもらい、気持ちよくスタートできました。マクラで「健康ブーム」や「落語ブーム」にまつわる小噺をしたところ、しっかり笑ってもらうことができ、その勢いで、本日の演目「六尺棒」へ突入。実は、頑固おやじと道楽息子の壮絶な親子喧嘩の中に寅さんのタンカバイをさりげなく挿入しているのですが、そのへんもしっかり聴いてもらえたようでした。

 続いては、福来助さんの『ぞろぞろ』です。福来助さんも最初の自己紹介の時、「福ちゃん」と声をかけてもらっていましたね。開口一番「私はまだ試用期間六ヵ月目なので、めくりがない」と自虐的に断りながらも、この施設の近くにある山形三中出身であることを巧みにアピール。そうしたマクラといい、自分なりのバージョンに仕上げたネタといい、デビューして六ヵ月目とは思えない堂々たるもので、お客さんの気持ちをつかんでいましたよ。最後のオチのところでは、お客さんもオチを唱和するという、楽しい高座になりました。福来助さんのあとは中入りとなり、10分間の休憩に入ったのですが、そこでもスタッフの方曰く「それでは皆さん、トイレの方にぞろぞろ、ぞろぞろと」。お後がよろしいようで。

 中入りの後は、福来助さんと同じくデビュー六ヵ月目の明世さん。ネタの『禁酒番屋』は、禁酒番屋の役人と酒屋の主人や店員との攻防戦を描いたもので、いじめられている側が、いじめる輩(やから)に対して、最後の最後に意趣返しをするという、時代劇ではおなじみの痛快な話。江戸時代、理不尽にいじめられてもお上には逆らえない庶民が、こうした落語を聞いたりして日頃の溜飲を下げたのではないでしょうか。時代は変わっても、パワハラ上司しかり、杓子定規な役人しかり。権力を持つ立場の者が、弱い立場の者をいじめる構図はなくなりません。『禁酒番屋』のようなネタは、これからも庶民に愛されることでしょう。それにしてもこの話がおもしろいのは、最後のオチに向けて、一つ一つの話をたたみかけていく技量があればこそ。明世さんのこのネタを聞くのは二回目ですが、バージョンアップしていましたね。

 そしてトリは、お待たせしました。ソーレホーム城南落語会に四回目出演の走風亭満月さんです。「四回目だからネタに困るなあ」と言いながら選んだ今回のネタは、艶笑落語の『紙入れ』。この話の主な登場人物は、まだうぶな貸本屋の若者、新吉と、彼をひいきにする豪快でちょっと間抜けな旦那。そして、その女房であり、新吉を誘惑するおかみさんの三人。満月さんはその三者の演じ分けが巧みで、特に色っぽくもしたたかな女房が、人差し指で床をくるくると回す仕草には思わず見入ってしまい、一緒に玉子焼きやうなぎをつつきながら、一献傾けたくなりました。満月さんのようにガッチリした体格の男性があでやかな女性を演じると、ギャップがあるだけにおもしろいですね。お客さんにも大うけで、新春落語会はほぼ時間通りに終了しました。

 昨日のソーレホーム城南での落語会は、お客さんやスタッフの方が期待して待ってくれており、本番ではリアクションをたっぷり返してくれるという、噺家冥利に尽きる落語会でした。山形落語愛好協会として、このように実績を積み上げさせてもらった依頼先を大事にして、これからもいっそう精進して行きたいと思いました。
                   
【山彦亭虎之輔】

コメントは受け付けていません。